空力ニュースレター No.18

Aerodynamics

空力ニュースレター No.18

渦 - Vortex2


Saab Viggen

前回のWheelerのボルテックスジェネレーターは, 上の絵の右のように、前方のデルタで作った渦を2番目のデルタで増強するのだが、サーブのビゲンのようなアレンジのものは、どの様な作用なのかは把握していないが、お互いに影響しあっていることはたしかであろう。ビゲンの写真を見ると、主翼の端から35%ほどのところのリーディングエッジに段差がある。 これはDogtooth(犬の歯)という別な形のボルテックスジェネレーターで境界層を減らすためのもの)。Hiα(ハイアルファ-高仰角)で飛ぶ飛行機、またはHiαに陥りやすい戦闘機などにはときどき見られる処理です。

効果なし

下の写真は1993年型としてNPTIが開発したP35という車でこれも空力は私です。この車はIMSA GTPの後にWSC用に1992年に開発したものです。この車は小さなダイブリップが付いていますが、ダウンフォースのためについているのではありません。

この車はダイブリップが殆ど効きませんでした。では付いているダイブリップは何をしているかというと、フロントタイヤの後ろに位置するオイルクーラーダクトの性能アップです。

ラジエターをフロントに配し、オイルクーラーのインレットが、上の絵の様にボディーサイドにあります。 サイドにダクトを配置すると回収できる動圧はせいぜい30%に落ちてしまう。このインレットの形状、位置などは百十何通り風洞テストをして決めました。小さなダイブリップとドアの後ろ、サイドデッキの上にちょこんと付いている三角のボルテックスジェネレーターで、合計3%くらいの動圧が余分に回収できた。といっても完全に前面に向けたダクトは100%の回収は簡単なので、如何にサイドは効率が悪いかということです。上の境界層除去装置に関してはまた別の機会にのべることにとする。

この車はプランビューで全幅、全長を目一杯に使っていてほぼ長方形です。フロントエッジの稜線が真っ直ぐなのがわかります。この形状の方が全体の揚抗比が良かったから採用したのです。というわけボスとのフロントウイングの契約書の件はダイブリップで一件落着、私の勝ちでしたが、最近ではルマンに出場する車にダイブリップの付いた車は見かけません。全車フロントエッジの稜線は真っ直ぐに、プランビューでの面積を最大にしています。

余談

渦の話ばかりなので、最後にもう一つ。トンボが自重の15倍もの重さのものを持ち上げられるのも、渦をうまく利用しているからのようです。運搬用の世界一力のあるヘリコプターでも最大積載量は自重分を持ち上げるのがやっとこくらいです。トンボは前の羽で付くった渦を後ろの羽でさらに増長させているらしいという映像もみたことがあります。下の写真はトンボの風洞テスト、風速15m/s。


Wind tunnel tests on a dragonfly( Somps and Luttges)


From (Aerodynamics Characteristics of Dragonfly Wing Sections Compared
with Technical Aerofoils) by Antonia B. Kesel

トンボは小さく、レイノルズ数も車よりはずっと小さな値でのオペレーションです。空気の粘性の影響が大きいエリアですので車とはちょっと違います。しかしその飛ぶさまは人間の作った飛行機では、とうてい近寄れもしないすごい性能です。重いものを持って飛んだり、ホバリングしたり、急前進したり、時にはバックもします。彼らの羽は厚みがなく上の絵のような折れ曲がった薄板状のものです。このデコボコの折れ曲がった板ですが下の写真のように、折れ曲がったエリアの淀んだ部分には渦が巻き、全体として見ると、なんときれいなエアロフォイルの形状を形創っています。


日本文理大学工学部航空宇宙工学科教授/マイクロ流体技術研究所所長 小幡 章著(トンボから学んだ風力発電)より

それにしても生物というのは驚くことばかりですが、トンボのメカニズムというのはすごいですね。誰かが言っていましたが、未だに飛行している長寿命のダグラスDC-3でも、たかだか70余年の歴史だが、トンボは何億年のフライト経歴があるから(?)トンボの飛行メカニズムやイルカやマグロの速度の秘密は、昔から世界中の研究機関で研究されています。

鈴鹿 美隆 (Suzuka Racing Svc.)

1980年代のIMSA GTP マシンやC カー、また現在もSUPER GT等、数々のチャンピオンマシンの空力を手がける空力デザイナー。Megane Ⅲ RS用 カーボンリアディフューザーClio / Lutecia Ⅲ RS用 フロントディフューザーClio / Lutecia Ⅲ RS用 カーボンリアディフューザーの設計・デザインを担当