空力ニュースレター No.17

Aerodynamics

空力ニュースレター No.17

渦 - Vortex

前回はノーズにつけたダイブリップ(カナード)が、大変な大きさのダウンフォースを産んでいるのに、その柔な薄板が撓んでもいなかった、と言う話しでした。のちのち、いろいろ考えたり、実験してみると図のようなことが起こっているようでした。ウイングの翼端でも、ガーニーでも同じですが、こういうものは非常に強い渦を作ります。前に話した電線のカルマン渦列も同じです、くじらの頭のところに見られる渦、燃料補給ホースの中に出来て給油時間を遅くする渦、流れは空気にしろ,液体にしろ、大小の渦の塊です。

デルタウイングの飛行機が大仰角で安定しているのも、ウイングの両端から出る渦が安定しているからだそうです。

ダイブリップの効果もこれと同じだと思います。これに作られる渦が非常に強いもので、車の後ろにまで影響します。想像の域をでませんがこの長い強い渦が他の大きな流れを変えているようです。

今までAだった流れがダイブリップの強烈な渦の帯の求心力でB方向に引っ張られるのではないかということです。

上はR34-GTR風のモデルを水の中でテストしたもので、コンデンスミルクをダイブリップに塗り、流れを作ると、このような 統合流膜[Integrated Streak Sheet] を観察できます。流れというのは思っているより複雑な、かつ整然とした面白いパターンを作ります。

右側の浅い円弧状がダイブリップ。糸で見ると円錐状に急角度で広がるが、ミルク膜の形成する模様は全く異なる。上の絵の左側はもっとずっと長くつづく。インテンシティーは和らぎ、段々と統合流膜は直径が増していく。

上の画面の赤色の帯は、ただ後ろに流れているように見えるが、捩れながら回転して、さらに円錐の上を回転している。

これは FA-18の高仰角(Hiα)でLEX(Leading Edge Extensions)から作られている。ただのCondensation Cloud/凝縮(雲)が形成されているだけのように見えるが、内部構造はきれいな秩序ある模様になっているのであろう。

三角翼のコンコルドなども可也り大きな仰角で着陸していたが、このような渦がとても安定したリフトをつくるから出来る技のようだ。


ボーイング737の主翼についたボルテックスジェネレーター

ボルテックスジェネレーターも強い渦をつくり、それを利用するという点では同じです。写真の翼の場合は、剥離しそうな流れに強い渦でエネルギーを与え、再付着させるというものです。この737の場合はフラップを使うときに、ボルテックスジェネレーターが効くのであろう(リーディングエッジから翼弦の1/5ほど下がった位置に20個位い並んでいるのが見える)。

Wheeler Vortex Generatorも同じで前のデルタ形状で発生させた渦(Vortex)を後ろのデルタで増幅させ、さらに強いボルテックスを生成します。

Wheeler氏はこれを家庭用の扇風機で開発し、エレクトラモーティブの風洞でも実験をして、特許を取得。大型のあるセスナ機に正式に採用されています。

ということで車の周りは渦、渦、渦と渦でいっぱいです。目には見えないだけです。

鈴鹿 美隆 (Suzuka Racing Svc.)

1980年代のIMSA GTP マシンやC カー、また現在もSUPER GT等、数々のチャンピオンマシンの空力を手がける空力デザイナー。Megane Ⅲ RS用 カーボンリアディフューザーClio / Lutecia Ⅲ RS用 フロントディフューザーClio / Lutecia Ⅲ RS用 カーボンリアディフューザーの設計・デザインを担当