空力ニュースレター No.08

Aerodynamics

空力ニュースレター No.08

コーナー速度

車は何で走ったり曲がったり出来るかといえば、理科の先生なら摩擦があるからと言います。車の重量+ダウンフォース、かける摩擦係数で摩擦円の大きさが決まります。ジェットエンジンやロケットエンジンを積んでいない普通の車なら、その車の最高性能はこのエンベロップからは、はみ出すことは出来ません。

基本的な最大コーナー速度は:

µ:タイヤと路面間の摩擦係数
g:重力加速度 9.81
r:回転半径 m
W: 車重 Kg
Df: ダウンフォース Kg

これに例として 車重 750Kg、タイヤ摩擦係数 1.8、コーナー半径 100m
と入れてダウンフォースを変えて計算すると-------

ダウンフォース0 kgコーナースピード164kph
ダウンフォース300 kgコーナースピード179kph
ダウンフォース750 kgコーナースピード214kph

(摩擦係数は荷重によって変化し、こんなにリニアでなく理想的なこのようなタイヤが有ったらの話ですが。)

加速にエンベロップの一番端まで使えば(ホイルスピンぎりぎり)、同時にコーナリングはできませんし、同じようにフルブレーキングしているときも同じです。コーナーで横方向に目一杯コーナリングしている間は、加速には移れませんしブレーキングも出来ないでしょう。ドライバーはじれったく加速に移れるのを待っているだけです。境目はタイヤの前後左右方向の摩擦力とそれぞれの反力の釣り合うところです。重力加速度は皆に同じで公平です、そして車の最低重量が決まっていて、タイヤも決まっていたら、何が出来るのでしょうか?タイヤの摩擦を出来る限り有効に使うことが、シャシー屋の仕事ですがダウンフォースというおまけがあります。

車重をふやしたら?

重量を増やせば摩擦力も大きくなりますが、遠心力も重量の2乗でかかってきますのでかえって遅くなりますし、加速減速にも不利。そこで、ご存知ダウンフォースです。遠心力とは関係ない摩擦力増大ファクターです。こんなにいいものは有りません!無理にエンジンパワーを上げて速度をあげようとすれば、エンジンは壊れるでしょう。ダウンフォースはリスクフリーです。非常にコストパフォーマンスのよい性能向上が出来ます。

シェーカー

ダウンフォースの話の前に、最近よく車の記事に出てくる7ポスシェーカー、7ポストリグとも言いますが7でなく4のも5のもあるので単にシェーカーと一般には呼んでいますが、先に簡単にふれておきます。シェーカーと言えばお酒のカクテルを作るのに使いますが、おなじ意味で車をガタガタと振る機械です。自動車メーカーでは車体の耐久テストとか、いろいろなことに使っていますがそれの発展版のようなものです。

シェーカー

各タイヤの下の台にはロードセルがあり、その台は油圧シリンダーにつながる。4輪とも別々にデータにのっとってガタガタとデズニーランドの乗り物のシュミレーターのように振動し、ロードセルの測定値を記録していきます。

シェーカー

最近は資金に余裕のあるチームはこれを備えています。4本のアクチュエーターは4輪に、残りはダウンフォースやらコーナーウエイトを与えます。何をするかと言うと、結論からいえばレース場1周したときのタイヤの与える垂直荷重の合計を計測し、いろいろシャシーをチューンし、その値が最大に成る様にするということです。

コースを走っているときのタイヤの上下動を記録して、そのデータで上の写真の油圧シリンダーを同じように振動させて、タイヤが地面にどれだけちゃんと接地しているかを測ります。

レース業界ではダンパー屋が一番先に使い出したものですが、今ではチームで持ってダンパーの調整に使ったり、個々のパーツの振動を測ったりして設計に生かしたり、セットアップには無くてはならない装置になりました。ようするにタイヤが跳ねて荷重が減っている間は加速も減速も、またはコーナリングだって出来ないわけですから、それを出来るだけ減らして接地力を最大にしようという訳です。上に述べたタイヤと路面の摩擦を最大限使うための道具です。

トランジエント

車は振動したり、もう少し遅いですが上下動したり、ピッチがついたり、加速、減速、ヨーがついたりします。車が定常状態でずっと走ることはまれです。このようなトランジエントの状態の空力は、定常とは大分ことなります。そしてこれは風洞では計測できません。というわけで完全な空力データはないのですが不完全でも空力データは入れないと全くあわないのでしょう。以前風洞モデルを実車と同じように振動させる油圧バランスが市場に出てきましたがあまり普及はしなかったようです。その結果を見ると空力データは振動している車体と振動していないのとでは大分異なるものでした。まあそういうデータでも入れたほうが現実に近づくのでしょう。

ダウンフォース、Cl、負揚力

以下の表はいろいろな車のCL,Cd,L/Dを集めたものです。情報源はまちまちで風洞テスト値、ロードテスト値などが混ざっていますのでそれを念頭に参照にしてください。
300kphのデータは241kphのデータを掛けただけですので可なりおおよそです。スピードが違えば車高もピッチ角も変わるからです。
下の表の生産車のデータはより参考程度となります。

ダウンフォース、Cl、負揚力

SRS Ct.1

上の表を見るとレースカーのCd値は結構大きく、それ以上にダウンフォースが大きいのがわかります。
Cdは小さくしたいのはやまやまであるがダウンフォースの方が重要だからです。

鈴鹿 美隆 (Suzuka Racing Svc.)

1980年代のIMSA GTP マシンやC カー、また現在もSUPER GT等、数々のチャンピオンマシンの空力を手がける空力デザイナー。Megane Ⅲ RS用 カーボンリアディフューザーClio / Lutecia Ⅲ RS用 フロントディフューザーClio / Lutecia Ⅲ RS用 カーボンリアディフューザーの設計・デザインを担当