空力ニュースレター No.07

Aerodynamics

空力ニュースレター No.07

下の図はまたまた古いですが、出典は [Fluid-Dynamic Drag] という本です。この本は空力屋には必需品のテキストで何でも載っております。Dr.Sighard Hoenerが集めた貴重なデータの宝庫です。しばらく絶版になっておりましたが復刻されてアマゾンでも購入できます。

Fluid-Dynamic Drag

上の図を見ますとやはり車の後端は魚の尻尾のような、またはソーラーカーのような長くて「すっと」しているのがドラッグには有利です。しかしあまり尻が長いと車庫にも入らないので短くするのですが、後ろを切断してRをつけるとあまり芳しくないわけです。そこで短くしたいときは魚の尻尾を包丁で切るように角を残して切り落とすとまあまあの結果が出ます。

デイトナコブラ

上の写真は1964年頃デビューしたデイトナコブラです。尻尾を切り落とした形状になっています。私のかってのボスであった Pete Brock がデザインしたものです。最近のプリウスもリアは全周ピン角にしております。R35GTRのトランク上面はチョイRがついていますがアルミなのであまりRを小さくできないからです。樹脂性にするかピン角のモールでもつければ解決できますがコストパフォーマンスで決めるところです。デイトナコブラの後ろはピンどころではなくアルミ板のピンが出ています。ピートブロックのこのペイントスキームはもはやレジェンドでクライスラーのバイパーまでこのペイントでショーに出品したりしています。

大いなる勘違い

車の空気抵抗と言いますと見た目の外形状で決まっていると思われるふしがあるのですが決してそうではありません。下の表はどの部分がどれくらいドラッグに寄与しているかを分解して表しています。CFD(*)のおかげでこのようなことが簡単に出来るようになりました。見た目の外形状の寄与率はわずか31.7%です。ドラッグ値は外形状で殆ど決まると思われる方がおおいのではないでしょうか。その他諸々が68%を占めているのです。ただしどの車もこのような値かというと全く違うでしょう。この車の場合は、こうらしい程度でとらえておいたほうがよいでしょう。
車名は出ていませんがボルボのCd=0.29なる車のデータです。Cd=0.29というのはかなり良い値ですからボディーの比重が減って、他の部分の比重が増えたのです。音の問題同様に、一箇所を良くすると今まで気にならなかった他の音が目立ってきます。イタチゴッコですが、それを繰り返して何でも良くなっていくのでしょう。エンジン3.1%となっていますがこれはエンジンルーム内でラジエターを通過した風が当たってドラッグがこれだけあるわけです。ボディより影響がおおきいのが冷却関係で33.4%もあります。 レースカーの空力デザイナーは仕事の半分くらいを冷却系の空力開発に費やしますが、生産車では空力をあまり考えない人たちが設計しています。まあ考えてもいろいろ制約が多いいという事かもしれません。レースカーデザイナーは揚抗比も同時に監視しながら冷却を考えます。揚抗比がどれほど重要かは別途説明します。

PartsPercentage of Total Drag
Cooling package (including radiator, intercooler, oil cooler, etc)33.4%
Exterior31.7%
Front wheels13.1%
Rear wheels6.9%
Floor6.9%
Rear Axle3.1%
Engine3.1%
Front Suspension1.4%
Exhaust0.7%

http://autospeed.com/cms/A_2455/article.html

フロントタイヤも13.1%も寄与しています。街乗りの車は車高が高く、タイヤが露出しているので大きく影響しています。レースカーはタイヤ幅は広いですが車高が低いのでずっと影響は少ないです。タイヤメーカーは空気抵抗のことなど全く考えないのでしょう。タイヤの空気抵抗は、ころがり抵抗とちがって車速の二乗で増えていきます。ドラッギーなタイヤは風切り音も大きいはずです!一般的にタイヤ幅が10mm増すとCd値は0.006-0.008ほど増えます。プリウスはタイヤ幅 195mmでR35GTRはフロントが255mmです。60mm広いわけですから 6x0.008=0.05くらい増えるはずです。まあこんなに正確にはいかないで、もっと影響は少ないかもしれませんが。GTRのリアは285mmですがフロントのほうが風速は早いと思われますので255mmを例に使いました。 ボルボのデータもフロントタイヤがリアの2倍になっています。0.05というと大したことはないと思われるかもしれませんが、Cd=0.28が0.33になるかもしれないということでドラッグ値という面からはマイナスですが、当然タイヤ幅は他の面でおおきく良いほうに影響します。いつかGTRに幅の狭いタイヤをつけてどんなもんか計測してみたいですね。

*CFD「Computational Fluid Dynamics」 数値流体力学 の略 別途説明します

鈴鹿 美隆 (Suzuka Racing Svc.)

1980年代のIMSA GTP マシンやC カー、また現在もSUPER GT等、数々のチャンピオンマシンの空力を手がける空力デザイナー。Megane Ⅲ RS用 カーボンリアディフューザーClio / Lutecia Ⅲ RS用 フロントディフューザーClio / Lutecia Ⅲ RS用 カーボンリアディフューザーの設計・デザインを担当